宇宙ビジネス。デジタルインフラの創造的破壊。 | ドイツビジネスコンサルティング

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宇宙ビジネス。デジタルインフラの創造的破壊。

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宇宙ビジネスが活発化している。また宇宙ビジネスの市場規模は、2016年には40兆円規模であったが、2040年に120兆円まで拡大すると米モルガン・スタンレーは予測している。実際、宇宙ビジネスは将来のデジタルインフラを創る鍵となる可能性が高いと考える。

宇宙ビジネスは将来のデジタルインフラを創る。

宇宙ビジネスはデジタルインフラになる可能性が高いと考えるが、それはつまり、通信とデータセンターを指す。現在は地上に設置されている通信基地局やデータセンターのサーバが宇宙へ移行するということだ。日本を代表する通信企業であるNTTや、世界最大のデータセンター(Amaon AWS)を保有するアマゾンが宇宙ビジネスに投資する理由はここにある。また宇宙ビジネスが実現した社会になれば、仮想通貨も一層社会に受け入れられる可能性も高くなると考える。脱炭素化したマイニングが可能となるからだ。


通信インフラ事業をディスラプトする宇宙ビジネスとは?

通信インフラとは、携帯やパソコンでインターネットを利用可能にするために必要なインフラのことである。これを実現させるため地上の至る場所に通信基地局を設置しているプレーヤーがNTTやKDDI、楽天などの通信会社である。地上に光ファイバー網や基地局を整備するためには多大な手間とコストがかかる。参入障壁も高い。そのため新興国など、世界では30億人以上がネットに接続できない環境にある。

しかし、宇宙に衛星を打ち上げることでこの構造が一変する可能性がある。宇宙に打ち上げた衛星は1000キロメートル以上の広範囲に電波を送れる。この衛星を利用すると地上にアンテナなどの最低限の設備を用意するだけでインターネットの利用が可能となる。これらのアンテナを多くの人が共有すれば、月額10ドル以下でのネットを利用できるかもしれない。これが宇宙ビジネスにより通信インフラ事業にもたらされるディスラプションである。

イーロンマスク率いるスペースXは2021年にサービスを始める計画を打ち出している。既に2020年末までに約900基の人工衛星を打ち上げている。合計で約1万2000基の人工衛星を打ち上げる想定で計画を進めている。またアマゾンも2020年7月に3000基以上の衛星を使う接続サービスの計画について、米連邦通信委員会(FCC)から認可を受けた。


データセンターをディスラプトする宇宙ビジネスとは?

人工衛星を打ち上げているアマゾンであるが、宇宙ビジネスは既存のデータセンター事業(Amazon AWS)との親和性も高い。アマゾンなどデータセンター事業をもつ会社は、個人や企業にクラウドコンピューティングサービスを提供する。しかしパリ協定を契機に世界はCO2削減に動いているため、多大な電気消費が環境に負荷をかけていること問題を解決することが大きな経営課題となっている。そのため、アマゾンは再生可能エネルギー発電により、消費する電力を賄うよう投資を進めている。しかし宇宙に打ち上げた太陽光発電で作動する衛星が、宇宙空間で地上のデータセンターの役割を担うことになれば、この問題は解決可能となる。尚、日本国内データセンター業界では「データセンターの設置場所がいずれなくなる」という問題も抱えているため、宇宙へ移行することでこれも解決可能となる。


宇宙ビジネスは仮想通貨普及に貢献する

いうまでもなく仮想通貨は以前より、社会に受け入れられている。しかし、仮想通貨技術の根幹となる「マイニング」により消費する電力が環境に負荷を与えている。その電力消費量は、ポルトガルの年間電力消費量を超える規模となっているとまで言われている。これが理由で、イーロンマスクもテスラ車購入にビットコインを使うことを可能にする計画も取りやめた。しかし、先程書いたように宇宙で太陽光発電により運用されるデータセンターでマイニングをするとなれば、問題はなくなる。ゆえに副次的ではあるが、宇宙ビジネうは仮想通貨普及に貢献する可能性さえあるのだ。


宇宙ビジネスを進めるNTT

NTTが宇宙空間でデータ処理をする仕組みの実用化に乗りだすと、日経新聞は報じた。しかし、宇宙ビジネスの広がることでディスラプションを起こり、他業界のプレーヤーに淘汰されないようにするためには自らディスラプションを起こすのが定石だ。これを考えると自然な動きだ。しかし理論的には正しいが、実践することは難しいことだ。

NTTは衛星の運用ノウハウを持つスカパーJSATホールディングスと提携し、2026年のサービス開始を目指す。2022年から実証実験を始め、2025年に商用衛星を打ち上げる予定である。

宇宙へ打ち上げる衛星通信1基ずつにデータ処理のコンピューティング機能を持たせる。複数の衛星間を光通信でつないでネットワークを構成し、疑似的なデータセンターの役割を持たせる。またデータ処理に必要な電力エネルギーはすべて太陽光発電で賄うことで脱炭素にもつなげる。NTTが「IOWN(アイオン)」と名づけて開発を進める光通信技術を利用することで、データの高速通信が可能となり、データ伝達の電力消費もいまの100分の1になる。

(参考記事)NTTの中期経営戦略『Your Value Partner 2025』の進捗

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