日本のR&D投資額は世界3位。課題は投資効率。
日本のR&D投資額は世界で3番目に大きい
主要国のR&D投資意欲を測る指標として、主要各国のGDPに対するR&D投資の割合を比較した。2018年までの過去5年間のデータを見ると、日本は主要10ヵ国中3位の高水準にある。
2017年のR&D投資額(百万USD)
順位 | 国名 | 2017年 (百万USD) |
---|---|---|
1 | アメリカ | 533,313 |
2 | 中国 | 484,480 |
3 | 日本 | 169,203 |
4 | ドイツ | 125,175 |
5 | 韓国 | 88,148 |
6 | フランス | 62,002 |
7 | イギリス | 47,328 |
8 | イタリア | 31,639 |
9 | カナダ | 27,736 |
10 | スイス | 18,469 |
注)R&D投資は、各国で活動する企業、研究所、大学および政府研究所などが実施した研究開発への総支出
更に、R&D投資額の観点から見ても、主要10ヵ国中3位(2017年)であるため、少なくとも統計データ上では決して努力が足ないわけでない。むしろ2002年以来、GDP比3%以上のR&D投資を継続する日本を評価したい。
GDPに対するR&D投資の割合(%)
順位 | 国名 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 韓国 | 4.1 | 4.0 | 4.0 | 4.3 | 4.5 |
2 | スイス | - | 3.4 | - | 3.4 | - |
3 | 日本 | 3.4 | 3.3 | 3.2 | 3.2 | 3.3 |
4 | ドイツ | 2.9 | 2.9 | 2.9 | 3.1 | 3.1 |
5 | アメリカ | 2.7 | 2.7 | 2.8 | 2.8 | 2.8 |
- | OECD全体 | 2.3 | 2.3 | 2.3 | 2.4 | 2.4 |
6 | フランス | 2.3 | 2.3 | 2.2 | 2.2 | 2.2 |
7 | 中国 | 2 | 2.1 | 2.1 | 2.1 | 2.2 |
8 | イギリス | 1.6 | 1.7 | 1.7 | 1.6 | 1.7 |
9 | カナダ | 1.7 | 1.7 | 1.7 | 1.7 | 1.6 |
10 | イタリア | 1.3 | 1.3 | 1.4 | 1.4 | 1.4 |
日本の課題はR&D投資効率
しかし過去10年間の日本のGDP成長率は、残念ながら主要10ヵ国中9位と低い。
R&D投資の本質は、長期的な経済成長(GDP成長)への貢献だと考える。また「R&D投資額 × 投資効率(リターン) = 経済成長(GDP成長率)」と単純化して考える。こうすると、R&D投資額は十分であるため、日本のR&D投資に足りない要素は「投資効率(リターン)」であることが明白になる。投資効率を上げるために、投資する研究テーマを吟味する、人への投資方針を見直す、投資配分を変える等、様々な方法/課題があると考える。投資効率を上げるためには、仮説を持った上で、投資効率の良い国の成功要因を分析することが欠かせない。
過去10年間(2009-2018年)の平均GDP成長率
順位 | 国名 | 平均GDP 成長率 (2009-2018の10年間) |
---|---|---|
1 | 中国 | 7.9% |
2 | 韓国 | 3.1% |
3 | アメリカ | 1.8% |
4 | カナダ | 1.7% |
5 | スイス | 1.5% |
6 | ドイツ | 1.3% |
7 | イギリス | 1.3% |
8 | フランス | 0.9% |
9 | 日本 | 0.7% |
10 | イタリア | -0.3% |
日本の問題は、情報価値軽視の風潮
余談ではあるが、日本の現場レベルでは既に同課題のに気づいているものの、改善のためのアクションまで至っていない企業も多くあると考える。実際、筆者は欧州で長く活動する日本企業の方とR&Dについても議論したことがあった。その際、「日本企業は人や設備投資(Development)にはお金を十二分に費やすが、投資分野についてしっかりと調査/戦略を立てること(Research)の価値を軽視して予算がつかない。社内へ声を上げても効果がない。」と言われておられた。実際、日本の調査/戦略コンサルティング(※業務/ITコンサルは除く)の売上総額は、マッキンゼーのドイツ支社単体の売上高にも満たない。
いずれにしても、投資効率(リターン)を上げるための努力が、今後の日本には求められる。
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