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自動車メーカとサプライヤーのソフトウェア開発と競争

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自動車業界はEV化や自動運転へ転換に向けて投資/開発を推進している。またその実現のためには、それらを制御するための「自動車用のソフトウェアシステム」が極めて重要となる。

 

自動車メーカのソフトウェア開発

自動車のソフトウェアシステムの市場は、2030年まで年平均15%で成長(CAGR)すると予測されている。現在は世界で約200億ユーロであるが、専門家はこの10年以内に少なくとも3倍には成長すると予想している。

このソフトウェアシステムにおいては、自動車メーカ(VW・BMW・ダイムラー等)、サプライヤー(ボッシュ・コンチネンタル・ZF等)共に投資/開発を進めている。しかしこの分野においては、サプライヤーは単なる自動車メーカの下請けという関係ではなく、より対等に交渉する関係となると考えているようだ。
VW、ダイムラー、BMWは独自の自動車用オペレーティングシステムの開発を進めている。例えば VWは自社のOS「Car.Software.Org」をID.3に搭載している。しかしID.3においても、そのソフトウェアには問題を抱えているため、初秋には改善することとなっている。ソフトウェア開発でやるべきことが多いため、自動車メーカーは全てを自社で開発するのではなく、自動車サプライヤーから一部ソフトウェアを提供してもらいたいと考えている。

そのニーズにサプライヤーも答えようとしている。またサプライヤーは制御ユニット(ソフトウェア)を何十年もの間構築してきたナレッジがある。それは フォルクスワーゲン BMWとダイムラーが何年もの間この開発をサプライヤーに任せていたからである。現在、自動車に搭載されているの全プログラムの約90%はサプライヤーから提供されたものである。この結果、ダイムラーのソフトウェアエンジニアは5000人だけあることに対し、サプライヤーのソフトウェアエンジニアの数はもっと多い。

 

サプライヤーのソフトウェア開発

  • 世界最大の自動車サプライヤーであるボッシュは、2020年7月に「クロスドメインコンピューティングソリューション」というソフトウェアのビジネスユニット設立を発表した。
    この組織の目的は、自動車のソフトウェアと電子アーキテクチャに関して、2021年初頭から単一の情報源から自動車メーカーにサービスとアドバイスを提供することである。17,000人の従業員のうち、8,000人は純粋なソフトウェアエンジニアである。それ以前はコントロールユニットやセンサーで働いていた9,000人の電子工学の専門家がこのユニットに集められる。将来的には4万人までの増加を見込んでいる。
  • コンチネンタルは「自動車用のソフトウェアキット」のビジネスに取り組んでおり、すでに30億ユーロの売上を確保している。例えば高性能コンピューターICAS1を現在、VW ID.3へ供給している。
  • ZFは、6年前に米TRWを買収することでボッシュとコンチネンタルに追いついた。ボッシュやコンティほど多くはないが、ZFにも数千人規模のソフトウェア開発者がいる。ZFは規模は小さいが強力なチームを抱えており、成功を収めている。米Nvidiaとの共同プロジェクトでは、ZF ProAIセントラルコンピュータを中心に部分的に自動化されたモジュールを構築す、すでに顧客へ販売している。

 

自動車メーカとサプライヤーの関係

このようにボッシュ、コンチネンタル、ZFも現在、電気自動車とコネクテッドドライビングへの転換の過程で、自動車のアーキテクチャに力を入れている。 しかしサプライヤーはソフトウェア製品の交渉力を、従来のように自動車メーカーに譲りたくはないようだ。実際、VWはグループ傘下の自動車ブランド全てに統一したOSを搭載させたいと考えており、そのためにパートナー(サプライヤー)を探しているが、まだ見つけらていない。VWはボッシュとコンチネンタルへコンタクトを取った。VWへの供給だけでも相当台数が見込まれるにも関わらず、両社はVWの契約条件を受け入れなかった。ソフトウェアに関しては、サプライヤーは自動車メーカーと同等に近い関係を築きたいのだと考える。

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