優良企業に学ぶマーケティング。売上高の6%は投資せよ。
目次
本記事の説明/前提
アメリカのケロッグ経営大学院はマーケティングに強いと名高い。同大学のマーク・ジェフリー教授が発表した「優れた企業のマーケティング投資」に関する分析結果(示唆)について紹介する。
本調査はアメリカのフォーチューン所属企業のマーケティング関連上層部に対して実施したものであり、統計的に有意な252社の有効回答数を得たスタディである。
優れた企業のマーケティング(総括)
優れた企業(=上位企業)とそうでない企業(=下位企業)を調査・分析した結果、以下の違いがあることを発見した。
※以下「マーケティング予算項目」の定義について
- B2B/B2Cによらず、平均で売上の6%の規模でマーケティング投資している。
- 上位企業が優先させている予算項目は、ブランディングとカスタマーエクイティである。
- B2Cの上位企業は平均より2.5%多い投資額を、B2Bの上位企業では平均より14%も多い投資額をマーケティング予算に費やす。
- B2Cの上位企業は需要喚起型マーケティングにあまり予算をかけず、ブランディングとITインフラにより予算を費やしている。
- B2Bの上位企業も同じであるが、その分の予算の振り分け方はブランディング、カスタマー・エクイティ、ITインフラとなっている。
- B2Bの上位企業は需要喚起型マーケティングの予算を減らした分を、まずはカスタマーエクイティに振り分け、次にブランディングに振り分けている。
- B2Bビジネスにとって、市場形成(製品・サービスの専門家との関係構築・維持することで良い印象を持ってもらうこと)は重要であると大半の人が考えるが、実は、B2B上位企業は市場形成への投資割合は小さい。
- マーケティング・キャンペーン・マネージメント(MCM)に優れた企業(上位企業)は、競合と比較して優れた業績を有している。
マーケティング予算項目の定義
上記総括で登場した「マーケティング予算項目」についての説明。ジェフリー教授は調査にあたり、マーケティング予算項目を、以下の5つに分類・定義した。
- ブランディング
ブランド資産を産み出し、顧客に製品・サービスがすぐに想起されるためのマーケティング。
(例)製品イメージ及体験にフォーカスした広告など - カスタマー・エクイティ
カスタマー・エクイティを生み出すためのリレーションシップ・マーケティング。
(例)優良顧客への特別オファーの提供や、B2B企業の場合の特別イベントやパーティ、ポイントカードなど。 - 需要喚起
短期間で売上を伸ばすためのマーケティング。
(例)クーポン、セール、期間限定価格など。 - 市場形成
製品・サービスに対して顧客が持つイメージを変えたり、第三者機関のレビューを利用して顧客が持つイメージに影響を与えたりするマーケティング
(例)影響力の高いブログ記事を発信しているコミュニティへのスポンサーシップによるソーシャルメディアマーケティングや、B2B企業においては製品サービスの専門家との関係構築や維持 - ITインフラ/組織
データウェアハウス、解析ツール、マーケティング・リソース・マネジメント(MRM)などのITインフラへの投資だ。
優れた企業の予算配分(B2C)
上記で定義したマーケティング業務への予算配分における、優れたB2C企業(上位企業)の特徴は以下のとおりである。
上位企業と下位企業のマーケティング予算配分(B2C)
マーケティング 予算の要素 | B2C 上位企業 | B2C 下位企業 |
---|---|---|
1. ブランディング | 15% | 10% |
2. カスタマー・エクイティ | 12% | 13% |
3. 需要喚起 | 44% | 50% |
4. 市場形成 | 12% | 12% |
5. ITインフラ/組織 | 18% | 16% |
合計 | 100% 平均値より 2.5%投資多 | 100% 平均値より 2.5%投資少 |
優れた企業の予算配分(B2B)
上記で定義したマーケティング業務への予算配分における、優れたB2B企業(上位企業)の特徴は以下のとおりである。
上位企業と下位企業のマーケティング予算配分(B2B)
マーケティング 予算の要素 | B2B 上位企業 | B2B 下位企業 |
---|---|---|
1. ブランディング | 11% | 7% |
2. カスタマー・エクイティ | 13% | 10% |
3. 需要喚起 | 46% | 54% |
4. 市場形成 | 8% | 13% |
5. ITインフラ/組織 | 12% | 10% |
合計 | 100% 平均値より 14%投資多 | 100% 平均値より 1.5%投資少 |
(参考)マーケティング・キャンペーン・マネージメント(MCM)とは?
上記総括で登場した「マーケティング・キャンペーン・マネージメント(MCM)」についての説明。ジェフリー教授は調査にあたり、マーケティング組織の能力(=MCM)を、以下の5つに分類・定義した。
- 選択
事業戦略に沿う形でマーケティング・キャンペーンを計画し、かつ文書化しているか。 - ポートフォリオ細分化
複数のキャンペーンを組み合わせることも考慮に入れ、全体的なポートフォリオ観点で最も効果的な組み合わせを選定したか。 - モニタリング
キャンペーンの進捗/効果測定を組織的に管理しているか。 - 適応学習
過去のキャンペーンで得たスタディを、将来に活かす組織能力を持っているか。 - ITインフラ
意思決定に使用するためのデータベース、解析ツールなどのITが整っているか
(参考)認知度マーケティングとは?施策前に検証方法を設計することが重要。
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