ボッシュ、水素事業を加速。内燃車事業からの脱却へ。
ボッシュは水素事業を加速しさせている。
2020年秋以降、燃料電池自動車(FCEV)や定置型水素電池を事業を前へ進めることを発表している。
衰退する内燃エンジン事業の代わりに、ドイツ政府や欧州委員会が発表した水素戦略(ドイツ国家水素戦略、EU水素戦略)に乗り、新事業を成長させたい意図があると推察する。
FCEVのパワートレインを販売予定
ボッシュは2020年9月に、未来のモビリティには燃料電池(FCEVで利用する電池)が必要であるという趣旨の声明を出した。
環境のためには内燃車からの転換が必要であるが、長距離走行が必要なトラックをEVで代替することは難しい。
この分野では、内燃車でもEVでもなく、FCEVが必要であるという見解である。
これはボッシュが初めて提唱したアイデアでなく、ドイツ政府が数年前からずっと言い続けているビジョンである。
ゆえにボッシュだけでなく、ダイムラー等の他社もFCEVトラックの開発を進めている。
(参考)ダイムラーは独政府の戦略に従い、長距離水素トラックへ
しかし、ボッシュの今回の声明ではFCEVが必要な理由を7つも挙げ、改めて必要性が強く訴えられていた。
またボッシュは40トンのトラックが1000キロメートル以上走行可能なFCEV用のパワートレインを2022-2023年に販売する目標を発表した。
尚、ボッシュはアメリカの商用FCEVメーカーのニコラへ燃料セルを供給している。
定置型水素電池
また2020年12月、ボッシュは定置型水素電池を2024年より販売開始する目標も発表した。
これは、英Ceres Power(セレスパワー)社と提携し、進めている事業である。定置型燃料電池には、固体酸化物燃料電池技術が活用される。
当該事業フェーズは、すでにプロトタイプ段階は完了し、商品化前の準備段階へと以降している。
また生産拠点はバンベルグ、ヴェルナウ、ホンブルグに、開発拠点はシュトゥットガルト(フォイエルバッハ・レニンゲン)を想定しており、2024年までに数億ユーロを投資する予定である。生産規模は年間約200メガワット(約40万人の家庭に電気を供給可能)と想定している。
「ボッシュは、定置型燃料電池システムにより、開発、製造、販売、サービスを単一のソースから提供する新しいビジネス分野を確立している」と取締役のChristian Fischer氏はコメントした。
また当該製品は、工場、データセンター、電気自動車の充電インフラストラクチャ、小型の分散型発電所等でも活用可能である。分散型発電所の市場は2030年までに200億ユーロ規模に達するとも予測している。
ボッシュの意図
2020年は、EUが水素社会へ向けて戦略を大きく転換した年である。
(参考)EUは「EU水素戦略」を策定し、新組織も発足。
これに合わせて多くの企業が動いたが、ボッシュもその企業のひとつである。
現状、FCEVは価格が高い上、BEV(バッテリーのみを動力に走る自動車)と比較し、大幅に効率が悪い。また水素事業に関わる従業員数も昨年と比較し倍増したものの、たった250人であり、全従業員数(40万人)と比較しても極めて小さい。
しかし内燃車がEVに代替され続けているため、ボッシュの内燃車(パワートレイン)事業が衰退するのは避けられない。
e-fuelが普及すれば、これまでの内燃車(パワートレイン)技術が活かせるが、これも不確実性が高い。
故にドイツやEUが目指す水素分野は成長市場であるため、FCEVや定置型水素電池等の成長する可能性のある水素事業を幅広く、前へ進めているのだと推察する。
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