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ブルー水素を強化する日本。将来はグリーン水素へ。

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欧州を筆頭に世界は水素社会実現へ向けて動いている。
しかし水素には、グレー水素・ブルー水素・グリーン水素の3種類がある。
2050年にはグリーン水素が世界の中心となる。日本も将来的にはグリーン水素の製造・活用が中心となるが、直近ではブルー水素を強化する方向で動いている。
本記事ではこの背景と、関連する基礎知識について説明する。

 

グレー水素とは?ブルー水素とは?グリーン水素とは?

グレー水素とブルー水素はともに、石油や天然ガスから生成する水素を指す。含有するメタンなどの炭化水素を水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素(CO2)に分離して水素を抽出する手法である。
この水素抽出過程でで生成されるCO2を回収するかどうかで、グレーかブルーの呼び方が変わる。CO2を回収しない場合はグレー水素、回収する場合はブルー水素と呼ばれる。
そもそもCO2排出削減の解決策としての水素が注目されているため、グレー水素はその解決策とはならない。
故に、同アプローチで水素を抽出する場合、ブルー水素にする必要がある。近年、多くの企業がCO2回収技術に注目・投資している背景にはこれがある。

一方、グリーン水素とは、再生可能エネルギー由来の電気を利用して水分解して得る水素である。
温暖化ガスを全く排出しないため理想形ではあるものの、大量の再生エネルギーを必要とするため、製造コストが高いことがネックとなっている。
 
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日本政府の戦略。水素普及の鍵は洋上風力。

日本政府は「2050年のグリーン成長戦略」を2020年12月に発表した。
14分野に定義した重要分野の上位3つを見ると日本政府が重視する戦略が見える。
1番目に持ってきた戦略が「洋上風力」、2番目が「燃料アンモニア」、3番目が「水素」ある。
再生可能エネルギーが最も重要となる。また同戦略によると、燃料アンモニアの位置付けは「水素社会への移行期では主力となる脱炭素燃料である」と定義されている。
つまり、「日本政府は水素社会を目指しており、水素製造のためには再生可能エネルギー、特に洋上風力の普及が鍵となる。
しかし水素社会インフラ構築には時間を要するため、繋ぎとして燃料アンモニアが必要」ということである。
実際、日本の再生可能エネルギー普及は十分ではない。IEA(2019)によると、日本や米国の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は、2割程度しかないとのことだ。デンマークは8割、ドイツは4割と欧州勢と比較するとわかりやすい。
尚、数字だけではイメージが湧きづらいと思うので説明すると、ドイツの再生可能エネルギーの発電量は、ドイツとオランダの一般家庭が利用する1年分の電気量を賄える規模である。
再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)を製造するために必要なエネルギーインフラ(再生可能エネルギーの発電量)は、日本にはまだ整っていない。このため、足元ではブルー水素を強化する動きが日本では活発化している。

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ブルー水素を強化する日本

伊藤忠商事は2021年2月に、ブルー水素を製造し、水素ステーション事業をフランスの産業ガス世界大手エア・リキードと共同で展開すると発表した。
水素の製造方法はLNGを水素と二酸化炭素(CO2)に分解する方式を軸に検討する。製造段階で発生するCO2は回収し、飲料品向けの発泡剤やドライアイスなど工業用途で外部に販売する。
水素はFCV(燃料電池自動車)の燃料に活用する方針である。新しく設置する水素製造プラントでは、FCV4万2000台分がフル充填可能な約30トンの水素量を、1日あたりで生産する計画である。
尚、日本のマーケットリーダーである岩谷産業は1日あたり約44トン程度が生産している。
また日本国内の水素価格はおよそ1キログラムあたり1000~1500円であるが、伊藤忠商事とエア・リキード社は1000円以下での提供を目指す。
伊藤忠商事が提携したフランスのエア・リキードは、水素生産の「世界3強」の一角となる企業である。世界3強とは、産業ガス大手のエア・リキード、独リンデ、米エアープロダクツ・アンド・ケミカルズである。

グリーン水素へ向けた動き

また2021年2月に東芝はGE(米ゼネラル・エレクトリック)と洋上風力発電分野で提携交渉を進めていると報じられた。
しかし、世界の洋上風力のシェア(発電容量ベース)は欧州勢2社で54%、中国3社で28%に対し、GEやその他企業を合わせても18%でしかない。
2020年に世界主要国では「水素」及び「洋上風力」に注目が集まった。日本政府は約2万キロワットの発電能力にとどまる洋上風力を、2030年までに1000万キロワットに拡大させたいと発表している。
しかし残念ながら、この波が来る以前に、日立製作所、日本製鋼所、三菱重工業が風車生産から撤退してしまった。
そのため、日本勢はゼロとは言わないまでもイチから風力発電の戦略を見直す必要に迫られている。
東芝だけでなく、三菱重工業も世界シェア2位のデンマークのヴェスタスと提携した。
このように、まだグリーン水素に必要な洋上風力インフラを整備するために欧米勢と提携する等、日本企業は動いている。
インフラ構築には時間がかかるため、しばらくは伊藤忠商事が動いているような「ブルー水素」に注目が集まる。
しかし長期的には「グリーン水素」が中心となると考える。

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