ライフサイクルアセスメント(LCA)と水素。EU企業の動向。 | ドイツビジネスコンサルティング

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ライフサイクルアセスメント(LCA)と水素。EU企業の動向。

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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?EUの戦略

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、「部品調達から製品製造、輸送・販売等、広範囲のプロセス(=製品ライフサイクル全体)を対象に、その環境負荷(CO2排出総量)を算出」する考え方である。欧州委員会は、世界に先立ってライフサイクルアセスメント(LCA)規制の導入を検討している。これにより、欧州企業の競争力・雇用を確保しつつ、カーボンニュートラル社会を実現させる戦略である。
アジア勢を始めとする他国は、欧州より自然エネルギーでの発電比率は低いため、ライフサイクルアセスメント規制を導入することで、欧州外に製造拠点を有する国に対して優位性を築くことが可能となるからだ。

また戦略実現のためには、自然エネルギーと水素の活用が鍵となる。そのため欧州は水素に関する投資も着実に進めている。

(参考)鉄鋼の産業方針をドイツ政府が発表

(参考)EUは「EU水素戦略」を策定し、新組織も発足。

LCA規制を意識する独自動車メーカ

現在のEUの排ガス規制は、自動車走行中のCO2排出量が規制対象となる。しかし自動車にもLCA規制が今後導入される可能性を意識し、ドイツの自動車会社も動いているようだ。
メルセデスは2039年をターゲットに、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現させることを目指している。このため、サプライヤーにもカーボンニュートラル実現を求めており、2039年までに未達となるサプライヤーは調達先から除外する方針を打ち出した。

メルセデス、CO2ニュートラル未達のサプライヤーを排除へ。

またLCA規制が導入されると、自動車生産時に利用する電気の炭素量も考慮される。VWは電力分野にも足を伸ばしているが、LCA規制も意識しているからだと考える。尚、VWは2020年の外部調達電力のうち再生可能エネルギーの割合が95%となり、前年の80%から大きく上昇している。さらに2021年4月、太陽光や風力などの再生エネルギー発電事業に参画すると発表した。脱炭素戦略のイベントでは「VWは産業規模での再エネ発電への投資をサポートする最初の自動車メーカーだ」とラルフ・ブランドシュテッター氏は見解を述べた。

 

水素製造を加速させるインフラ企業

2020年以降、EUのインフラ企業が自然エネルギーと水素を生産する動きが加速している。
シーメンスエナジーとシーメンスガメサは、洋上風力タービンを改良して電解装置を取り付け、洋上風力発電 に水素生産設備を統合する開発プロジェクトを発表した。同プロジェクトへの投資総額は1億2,000 万ユーロに上り、連邦教育研究省(BMBF)も助成している。
【解説】今更聞けない洋上風力。
バッテンフォールはハンブルグの石炭火力発電所を閉鎖し、跡地でグリーン水素生産を計画。100MWの水素生産施設建設に加え、水素バリューチェーンの実現に向けて2021年1月に、石油大手シェル、ハンブルグ熱供給公社(バルメ・ハンブルク)、三菱重工業が提携に合意した。
RWEジェネレーションもガスパイプライン事業者や、英石油大手 BP、独化学大手のエボニック、BASF などの需要家企業と提携し、水素バリューチェーン(GET−H2 Nukleusコンソーシアム)の構築に取り組む。まずはドイツ北西部リンゲンのガス火力発電所に100MWの電解槽プラントを設置し、生産した水素を近隣の工業地帯の産業需要家へパイプラインで直送する計画。将来的には供給範囲を全国に拡大する。

 

エネルギー需要企業側での水素利用

脱炭素・ライフサイクルアセスメント規制のため、製造業では水素利用も活発に進んでいる。
例えばBASFもシーメンスエナジーと化学製品生産過程における各種の脱炭素技術で提携し、50MWの固体高分子PME型水素生産施設を建設する計画を発表している。シーメンスも、南部バイエルン州ブンジーデルの自社蓄電池工場の敷地にグリーン水素の生産施設を建設する計画を発表した。
鉄鋼分野ではティッセンクルップが、主力生産拠点のドイツ西部デュイスブルク製鉄所で2019年に水素を還元剤として高炉に注入し、生産過程でのCO2 排出を削減する世界初の実証試験を実施した。まず既設の高炉の利用に投資して数年後に新たに水素還元製鉄法へ切り替える計画で、切り替え後は年間2万トンのグリーン水素が必要となる。こうした水素需要拡大対応するため、ドイツのエンジニアリング企業STEAGと共同で製鉄所近くでの水素の自社生産を検討している。またザルツギッター(鉄鋼)も、低炭素の製鉄技術開発を目指し、高炉での水素利用をドイツのフラウンホーファー研究所と開発を進めている。

 

水素関連の新技術・ビジネスの紹介

水素関連の新技術・ビジネスに取り組む企業に関しても紹介する。
ケヨウ(水素エンジンスタートアップ)は、リチウムイオン電池と比べエネルギー密度 が高くコストも安い点を訴求し自動車用水素エンジンの開発を行っている。EUのイノベーション助成機関から700万ユーロ助成されることも決定した。
ハイドロジーニアスLOHCテクノロジーズ (水素貯蔵技術スタートアップ)は、大量の水素を安全かつ安価に輸送・貯蔵で きる液体有機水素キャリア技術(LOHC)の実用化・商業化に取り組んでいる。水素をトルエンなどの有機物と化合(水素 化反応)、液体化させると、体積を大幅に減らして常温・常圧で輸送・保存ができる。水素の利用場所では水素を分離(水素発生反応)し、トルエンは再利用する。
Deutsche Bahn(ドイツ鉄道)は、2024年よりシーメンス製の燃料電池列車をドイツ南部の一部路線に投入し、1 年間の試験運行を実施する。燃料の水素は同地域の自社施設で生産し、新設する充填設備でディーゼル車輌への給油と同様の短時間で水素を充填できるようにする。尚、同社は2018年に、フランスの重電大手アルストムと組んで世界初 の燃料電池車輌の試験運行も行っている
さらにリンデ(産業用ガス大手)は世界初となる旅客列車向けの水素充填ステーションを、ニーダーザクセン州のブレーマーフェルデに建設すると発表した。2022年初旬にサービス提供予定。同充填ステーションでは、アルストム社の燃料電池列車 4台に水素を提供し、設置容量は 1 日当たり1.6トン規模である。

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