国際競争力を持つ優良企業。ドイツの「隠れたチャンピオン」
「隠れたチャンピオン」とは?
「隠れたチャンピオン」とは、ハーバード大学・スタンフォード大学・マサチューセッツ工科大学・ロンドン大学・慶應大学等で教鞭を執っていたドイツ人、ハーマン・サイモン教授が1980年代より提唱した概念である。
サイモン教授によると隠れたチャンピオンの基準は以下、3つある。
- 世界市場で3位以内に入るか、大陸内で1位である。
- 売上高が40億ドル以下である。
- 世間からの注目度が低い。
隠れたチャンピオンは世界シェアが高いだけでなく、利益率が高く、持続的な競争優位性を持つ魅力的な優良企業が多く、ドイツ・アメリカ・日本・北イタリア・北欧に多く所在する。
隠れたチャンピオンはドイツに多い
2015年時点で隠れたチャンピオンは、世界に2000社以上になり、その67%はドイツ語圏(ドイツ・スイス・オーストリア)である。このような理由もあり、日本企業からドイツでのM&Aの相談を受ける際に、最初からこれらの企業をターゲットとして名が挙げられることが多い。下記で、ドイツの隠れたチャンピオンの一例を挙げる。
- バーダー(世界市場シェア80%)
リューベックを拠点とするバーダーは、魚の処理システムの世界屈指のサプライヤーである。 - デロ(世界市場シェア80%)
銀行カードやパスポートチップ、スマートフォン等、多くの分野でデロの接着剤が用いられている。 - ランタル(世界市場シェア60%)
ランタルはドイツの小さな町、ランゲンタールの略称だ。カスタマイズの旅変機用内装を手掛けるグローバル・リーダーはこの町を本拠としている。ボーイング、エアバスなど300以上の航空会社を顧客としている。当然ながら、シンガポール航空のラッフルズ・クラス、ルフトハンザのファースト・クラスとビジネス・クラスは、ランタルが設計したもの地位、典型的な特徴がわかるはずだ。 - WET、ベバスト(世界市場シェア50%)
冬の寒い時期に、自動車のシートが温かくするヒーティング技術に、世界市場リーダーのWET自動車システムが用いられている。 - エネルコン(世界特許シェア40%)
風力タービン業界の主要企業の一つであり、風力発電分野の明白な技術リーダーである。世界の風力発電に関する特許の40%以上を持つ。
尚、日本でも浜松ホトニクス(工業・医療に応用される光源)や、日本写真印刷(小型タッチパネル)が隠れたチャンピオンに該当する。
上記以外にもドイツでは隠れたチャンピオン企業が数千とあるが、その多くはバリューチェーンの後背部で活動することが多いため、消費者の意識にのぼらないため、気づかれず存在している。
ドイツ語での調査が必要な理由
またドイツの隠れたチャンピオンは、地方の中堅企業というケースが大半である。そのためドイツ語でしか取得可能できない情報も多い。その一方で、日本国内のコンサルティング会社は外資・国内資本に関わらず、英語と日本語で調査を進めることが大半である。故に、実は十分な情報が取得できていないという現状がある(かつ、そのことに気づいていない日本企業も多い)。
例えば、当該企業の詳細な財務諸表はドイツ語でのみ取得可能だというケースは多い。(※但し、SpeedaやS&P等の有料サービスでも財務諸表は取得可能だが、それは最新版でなかったり、売上のみ取得可能だったりと取得可能な粒度が全く異なる。)
実際、以下表(またはリンク先の2ページ目)を見て比較して頂きたい。
これは2017年に独メディア主催の「隠れたチャンピオン賞」を受賞したA社の損益計算書である。
※ ピンク色部:某有名データベースで取得可能な損益計算書の粒度、
※ 青色部:ドイツ語調査で取得可能な損益計算書の粒度
故にドイツの、特に中堅企業を財務分析を実施するためには、ドイツ語での調査が欠かせないことにも留意すべきだ。
ドイツ語の財務諸表①:損益計算書の分析
ドイツ語の財務諸表②:貸借対照表の読み方
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