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EUの新方針は「環境ビジネスで、覇権を狙う。」

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欧州委員会の新体制と方針

2019年の欧州議会では環境政党が躍進した。それを受けて新体制となったウルスラ・フォンデアライエン委員長率いる欧州委員会は、環境分野の総合対策「欧州グリーンディール」に50項目に及ぶ政策を盛り込んだ。気候変動に対する野心的な目標を達成するため、これらの政策をもとに今後3年間で各国のルールや規制を改定していく。
EUは、実質排出ゼロを50年までに達成する世界初の経済圏になることを目指す。グリーンディールで最も議論を呼ぶ項目は国境炭素税の導等の「国境炭素調整メカニズム」である。当該議論は20201年に実施される予定である。誰にも反対しようのない脱炭素の大目標を語るようでいて、自分たちの得意分野に世界を引っ張り込み、ビジネスと政治の両面で影響力を高めている。

EUの優先課題6つ

フォン・デア・ライエン欧州委員会体制の下での優先課題は、以下6つである

  • 1.欧州グリーンディール(A European Green Deal):
    2050年気候中立(温室効果ガスの実質排出ゼロ)目標を達成しつつ経済成長も実現する様々な措置を含む。

  • 2.欧州デジタル化対応(A Europe fit for Digital Age) :
    EUレベルでのAIに関する規制提案のほか、「Fit for Digital Age」戦略、サイバーセキュリティ指令(NIS指令)の見直し、中小企業(SME)戦略、研究イノベーション分野での取り組みなど、デジタル化に向けたさまざまな措置を含む。

  • 3.人々のための経済(An Economy that Works for People):
    公正な移行に向けた強力な欧州社会に関する政策文書の発表をはじめ、公正な最低賃金の設定、資本市場同盟(CMU)に関する行動計画、アンチマネーロンダリングに関する行動計画、21世紀の企業課税に関する提案など、社会的公正と繁栄の両立に向けた様々な措置を含む。

  • 4.世界におけるより強い欧州( A Stronger Europe in the World):
    アフリカやカリブ太平洋地域との協定締結、2020年以降の東方パートナーシップ、人権および民主主義に関する行動計画、WTO改革などに関する措置など、ルールに基づくグローバルな多国間システムにおける欧州の役割強化に向けた様々な措置を含む。

  • 5.欧州生活様式推進(Promoting our European Way of Life):スキル強化や教育向上に向けた措置のほか、難民・移民に関する措置、域内の安全確保に関する措置(新安全同盟戦略など)、市民の健康保護に関する措置など、欧州の市民の保護や価値観の保護に向けた様々な措置を含む。

  • 6.欧州の民主主義をさらに推進する(A New Push for European Democracy):
    欧州民主主義行動計画をはじめ、基本的権利や、人口変動、非差別原則の強化に関する措置など、欧州の民主主義強化に向けた様々な措置を含む。

EUの最優先課題

中でも、新体制下の政策的支柱として最も注目が集まっているのが、優先課題のトップに挙げられている、環境・社会・経済産業政策といった広範な政策領域を対象とする「欧州グリーン・ディール」である。

グリーン・ディールの下での取り組みは、7つの政策分野 (①クリーンエネルギー、②持続可能な産業、③エネルギー・資源効率的な建築及び 改修、④持続可能でスマートなモビリティー、⑤生物多様性およびエコシステムの保 全、⑥農場から食卓まで(From “Farm to Fork”)、⑦汚染ゼロ)に分類される。

単なる環境政策にとどまらず、産業政策や運輸、エネル ギー、農業分野など広範な政策分野をカバーする、新たな「成長戦略」として位置付けて いる。

【関連情報】
(参考)グリーンディールの7つの政策分野 欧州委員会はEU水素戦略を策定し、新組織を発足。 日本政府、2050年のグリーン成長戦略を正式発表。 シーメンスエナジー、独代表銘柄DAXへスピード昇格。洋上風力・水素・e-fuelへの期待。 10兆円企業を10社育成。EU、環境・デジタル市場へ100兆円投入。



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