「2035年の内燃車販売禁止法」にEUが王手。 | ドイツビジネスコンサルティング

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「2035年の内燃車販売禁止法」にEUが王手。

本日(2021年6月8日)、欧州議会は欧州委員会の提案である「2035年にPHEVを含む内燃車の新車販売禁止」を賛成多数で決定した。これにより残すプロセスは欧州理事会の承認のみとなった。しかし欧州理事会でも可決される(=法制化され)可能性は高いと考える。ゼロエミッション車(=CO2排出ゼロ)である「e-fuel + 内燃車」も排除される可能性が高い極めて難しい状況下にある。

欧州議会が内燃車の新車販売禁止を支持。

欧州議会は賛成339票、反対249票、棄権24票で、「2035年までに新車販売におけるゼロエミッションの達成(=PHEVを含む内燃車の新車販売を禁止)」するという欧州委員会の提案を支持することを決定した。尚、対象となる自動車は、乗用車(Passenger car )と小型商用車(light commercial vehicles)である。

そもそも欧州委員会に提案された法案であるが、欧州議会が承認したことにより、今後は欧州理事会の承認を経ることで法制化される。もし欧州理事会も承認した場合、ハイブリット車・プラグインハイブリット車もEUで販売禁止と正式に決定することになるため、日本、トヨタにとって手痛い。

(原文)欧州議会のプレスリリース

欧州理事会が承認する可能性は高い。

2021年7月に欧州委員会が「2035年までに新車販売におけるゼロエミッションの達成(=PHEVを含む内燃車の新車販売を禁止)」を提案した際にも述べたが、日本の自動車業界にとっては残念なことだが、本提案が実現する可能性は高いと考える。

【参考】EUでハイブリット車も販売禁止。トヨタ、欧州戦略練り直し。

それは欧州議会や欧州理事会は、欧州委員会以上に環境(CO2排出)に対して厳しいスタンスを取り続けているからだ。例えば、2019年に可決された「2030年からの排ガス規制強化」に関する承認プロセスを例に挙げる。
2018年に欧州委員会は自動車産業に配慮し「30年のCO2排出量を 21年比で30%削減」を提案した。しかし欧州議会は「甘い。21年比40%削減を採択すべきだ。」と反論した。これを受け欧州理事会は「欧州委員会は甘いが、欧州議会は厳しすぎる。21年比35%削減で良いのではないか。」と見解を述べた。
結果、欧州議会と欧州理事会の間の数字をとって37.5%となった。
ここからもわかるように、意思決定期間である「欧州委員会・欧州議会・欧州理事会」の3機関の中で、欧州委員会は一番甘い意見を持っている。(尚、当時と違い現在の欧州委員会メンバーは、2019年欧州議会選挙後に刷新されている。)
故に、欧州委員会が提案した厳しい案は、欧州議会や欧州理事会でも承認される可能性が高いと考える。

e-fuel(合成燃料)で内燃車が残る?

e-fuel(※e-fuelsやefuelも同義)とは、水を電気分解したH2とCO2を触媒反応で合成した液体の炭化水素鎖(燃料)のことである。つまり水素を利用した液体燃料である。水素は、再生可能エネルギーを利用して生成される(=「グリーン水素」と呼ばれる)。ゆえにe-fuelは、水素自動車やBEVと同じくモビリティで「カーボンニュートラル(炭素中立)」を実現させる手段である。

「e-fuel + 内燃車」はゼロエミッション(=CO2を排出しない)である。しかし、欧州委員会の提案(及び、欧州議会が承認した内容)では「電動車(電気駆動の自動車)」のみ販売可能となっているため、「e-fuel + 内燃車」も販売禁止対象に入る可能性がある。

また現実問題、e-fuelは生産に大量の電気を消費する上、その生産量も圧倒的に不足しているため極めて難しい状況にある。e-fuelは水素を活用して生産するのだが、そもそも水素の生産自体が圧倒的に不足しているため現段階ではe-fuel生産に使うことは極めて難しい。ゆえに「e-fuel + 内燃車」であれば販売可能だが道は険しい。

尚、e-fuel生産にはドイツ政府が助成金を出し、ポルシェやシーメンスエナジー等がチリで風力発電により水素、e-fuelを生産する実証実験に数年前から取り組んでいる。

(参考)水素の液体燃料e-fuelへ。トヨタ勢がAudiを追い始める。

(参考)トヨタ、「e-fuelエンジン」「水素エンジン」の両方に開発意欲。

(参考)e-fuel普及シナリオも用意すべき。

6/14 追記:ステランティスは欧州自動車工業会を去る。

欧州議会の決定を受け、ステランティスは欧州自動車工業会(ACEA)を去ることを決定した。ステランティスは欧州で2番目、世界で4番目に大きい規模の自動車会社であり、傘下にはフランスのプジョーとシトロエン、イタリアのフィアット、旧クライスラーグループ(米国)のジープやダッジ等のブランドを抱えている。欧州最大の自動車会社であるフォルクスワーゲンCEOのヘルベルト・ディースの立場とは異なり、ステランティスCEOのカルロス・タバレス氏は内燃車廃止に反対の立場であった。

欧州議会が2035年にPHEVを含む内燃車の新車販売禁止」を賛成多数で決定したことを受け、ステランティスは欧州自動車工業会(ACEA)のロビイング活動が機能していないと判断し、同団体を去ることを決めた。ステランティスは今後「持続可能なモビリティに関するフォーラム」の開催等、独自に活動するとのことだ。



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