EUでハイブリット車も販売禁止。トヨタ、欧州戦略練り直し。 | ドイツビジネスコンサルティング

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EUでハイブリット車も販売禁止。トヨタ、欧州戦略練り直し。

European Commission

欧州委員会は欧州グリーンディール政策の枠組みで、脱炭素社会に向けた包括案を公表した。注目すべきは、2035年よりEUでハイブリット車を含む内燃自動車の新車販売が禁止される点である。これにより、自動車メーカーは戦略の見直しが余儀なくされる。

(原文)European Green Deal: Commission proposes transformation of EU economy and society to meet climate ambitions

欧州委員会の提案は可決される。

今回、欧州委員会はハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。これは可決される可能性が必要に高い。それはEUの自動車の排ガス規制強化に関する過去の承認プロセス状況をみるとわかる。実際、2019年に可決された「2030年からの排ガス規制強化」に関する承認プロセスを例に挙げる。
そもそも欧州委員会の提案は、欧州議会と欧州理事会の承認を経る必要がある。
2018年に欧州委員会は自動車産業に配慮し、「30年のCO2排出量を 21年比で30%削減」を提案した。しかし欧州議会は「甘い。21年比40%削減を採択すべきだ。」と反論した。これを受け欧州理事会は「欧州委員会は甘いが、欧州議会は厳しすぎる。21年比35%削減で良いのではないか。」と見解を述べた。
結果、欧州議会と欧州理事会の間の数字をとって37.5%となった。
ここからもわかるように、意思決定期間である「欧州委員会・欧州議会・欧州理事会」の3機関の中で、欧州委員会は一番甘い意見を持っている。(尚、当時と違い現在の欧州委員会メンバーは、2019年欧州議会選挙後に刷新されている。)
故に、欧州委員会が提案した厳しい案は、欧州議会や欧州理事会でも承認される可能性が高いと考える。

2026年より国境炭素税の導入。

さらに今回のEUの包括案では、2023年から国境炭素調整措置を暫定導入する計画も発表された。国境炭素税とは、中国など環境規制が十分でないEU外(第3国)企業へ課す関税である。当該企業がEUへ輸出する製品が、温室効果ガスを多く排出する手法で生産されていた場合、その量に応じて炭素税を課すというものだ。国境炭素税を導入することで、環境に配慮した生産を余儀なくされるEU域内の事業者が、EU域外の事業者に対して不利な競争環境に置かれないようにするための措置である。例えば、同じ製品をつくるにしても、中国内で環境に配慮せずに製造された製品より、EU内で環境に配慮された製品の方がコストが高くなる。このEU外での環境規制の緩さを利用し、EU外で生産された製品がEUに流入すれば、EUに製造拠点を置く企業に打撃になる。この状況からEU企業を守ることが国境炭素税の意義である。

国境炭素税は、2019年末に新体制となった欧州委員会が、発足当初から発信していた案である。また2020年、EUの柱となるメルケル首相とマクロン首相は、コロナ禍の中でも直接会い、国境炭素税導入賛成の方向で議論を交わしていた。

【参考】

EU、国境炭素税で優位な「環境ビジネス市場」ポジションを狙う EUの新方針は「環境ビジネスで、覇権を狙う。」

国境炭素税は2023年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針である。本格導入(税金を課す)時期は2026年となる見通しである。

トヨタも欧州戦略の練り直しが必要。

トヨタは2021年5月に「2030年の欧州新車販売に占めるEVの比率を40%にする」と計画を発表したばかりである。またトヨタはハイブリット車に強みがあり、欧州でも近年販売を伸ばしていた。今回、ハイブリットの新車販売が禁止になるは大きな痛手であり、欧州戦略の練り直しは避けられない。また英国とポーランドに持つエンジンや変速機の工場への影響も避けられない。

欧州の欧州EV市場は急激に成長しており、欧州自動車メーカーも次々と電動化戦略を打ち出している。

【参考】

欧州EV市場が世界最大に。日本はEV・FCEV普及で他国に遅れる。 EV専業へ大転換。英高級車「ジャガー」Reimagine戦略。 BMW、新販売戦略を発表。デジタルで最高益に。 メルセデスは2020戦略を更新。業績は好調。 フォルクスワーゲン、ID.3好調。EV販売4倍でマーケットリーダーに。

欧州自動車メーカーの中でも特に、フォルクスワーゲンはヘルベルト・ディース社長が先頭に立ち、急激にEV化を推進している。そのディース社長でさえ、「禁止への備えはできているが相当厳しい。電池生産の急激な立ち上げが必要になる」と見解を述べている。また日本の自動車メーカーでは近年、欧州の生産拠点を閉鎖する動きもあり、欧州で生産拠点を持たない企業も多い。これらの企業が欧州で戦うためには、国境炭素税も考慮した検討も必要となる。

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