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e-fuel普及シナリオも用意すべき。

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市場ではEV普及が確実視されている。またEV市場は現状、供給側・需要側の両方で欧米中が席巻している。日本はEVの巻き返しと同時に、水素を活用したFCV普及も計画している。しかしEVやFCVだけでなく、e-fuel普及シナリオも戦略の検討事項に加えるべきである。これは自動車業界だけでなく、インフラ等の関連業界もe-fuel普及が自社に与えるインパクトを検討して頂きたい。

自動車の将来シナリオ

2015年のパリ協定批准以来、CO2排出をゼロにする方向へ世界は動いている。
EV市場はコロナ禍でも成長を続け、日本も2030年のガソリン車禁止を打ち出した。
またVWやジャガー、ボルボ、GM、フォード等、多数の自動車メーカは戦略を修正し、EV企業/モビリティ企業への変革を目指している。EVの世界販売は二桁成長を続けており、金融市場でもテスラやバッテリー企業などのEV銘柄は高騰している。
このようにEV化へ向けて流れは加速していることがわかる。このペースでは2050年には内燃車は遺物となり、EVだけが道路を走る将来が来るとさえ思えてくるが、そう判断するのはお待ち頂きたい。

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将来シナリオに変化の兆し

確かに2019年まではEV普及シナリオが有力であったが、2020年を契機に状況が変化した。
EUを皮切りに日米英が水素戦略を打ち出したことで、e-fuelで走る内燃車が普及するシナリオの実現可能性が高まった(※日本はFCVへの水素活用を推進している。)
e-fuelはグリーン水素から生成する液体燃料であり、実質上CO2排出はない。ガソリンスタンドインフラも活用可能であり、EVのように充電時間・走行距離・摩耗の問題もない。
課題はe-fuelの製造コストである。再生可能エネルギーから水素製造・活用・消費までのエネルギーバリューチェーンを効率化する必要がある。しかし政府が水素活用に本腰を入れ始めたことで、e-fuel実用化に現実味が帯び始めた。欧州のe-fuel協会によると、2025年にe-fuelはコスト競争力を持ち始めるという。

 

欧州がEVを推進した背景

今はEV販売を全面に押し出している欧州自動車メーカであるが、その理由は2021年に導入される排ガス規制への対応にある。クリーンディーゼルからの脱却が求められていた。
EU議会へのロビー活動も通じず、トヨタが特許を抑えているハイブリットやFCVへ進ことも欧州の産業競争力の観点から難しかった。
規制による罰金を回避するために残された選択肢はBEVしかなかったため、欧州はEV普及政策を急速に進めた。
結果、欧州の自動車メーカーはEVに強くなった。
2020年の上位10ブランド中、6社が欧州メーカーである。
内訳は1位テスラに続き、VW、BYD、上汽通用五菱汽車(シャンチートンヨンウーリンキシャ)、BMW、メルセデスベンツ、ルノー、ボルボ、アウディ、上海汽車である。
日本の姿がないことは残念であるが、EV市場の大部分は米中欧が占めているため、同地域のメーカが強くなることは、ある程度は納得するしかない。

 

e-fuelを普及させたい理由

欧州はEVを推進しているが、本音では内燃車を残したいと考えている。日本と同様に自動車で雇用を守っている点も大きい。しかし最大の理由は、EVでは参入障壁を築くことが難しいことにある。
ソニーやアップル、ダイソンのような新規参入者とも戦うことになり、マグナのような完成車受託製造メーカもそれを後押しする。
実際、欧米でも中国でも各々10社以上のEV新興メーカーが参入を開始している。日本でも、出光興産・ヤマダ電機や佐川急便が小型EVを開発している。
e-fuelであれば内燃エンジンの技術が活用可能なため、このような新規メーカーに対する優位性を確保し続けることが可能になる。

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e-fuelを推進する欧州

EV販売により排ガス規制対策への道筋が見えた今、欧州の自動車メーカはe-fuelの開発に本腰を入れ始めている。例えば、ポルシェはシーメンスエナジーとチリでe-fuel製造プロジェクトを共同実施している。
ドイツ政府もこのプロジェクトに助成金を出すことで協力している。
ドイツ政府としてもe-fuelにより雇用とCO2ゼロ排出を同時に実現できるなら願ってもない。
マツダも今月、欧州のe-fuel協会に加入した。
EVやFCVの普及を否定しているわけではない。e-fuelが普及することも選択肢の一つとして戦略シナリオに加えて頂きたい。
またe-fuelが普及のキーとなるプレーヤーはインフラ企業であるため、自動車業界だけでなく関連業界もe-fuel普及が自社に与えるインパクトを検討して頂きたい。

但し、現状の欧州自動車業界は、EVにリソースを集中させている。
今まで大きなアドバルーンを挙げ、巨額の投資を進めてきたEVを簡単になくすことはしないと考える。そのため、e-fuel普及を最有力シナリオとして簡単に置くべきではない。e-fuel普及は、あくまで選択肢のひとつとして用意するに留めるべきである。

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