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アップルカー発売に驚きはない。Appleとパートナーになる選択も日本勢は考慮すべき。

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記事作成日: 2021年2月7日
記事更新日: 2021年2月17日

Apple社のアップルカー発売に関する報道と生産委託先との交渉状況について、2月7日に本記事(「アップルカー発売に驚きはない。Appleとパートナーになる選択も日本勢は考慮すべき。」)で紹介した。その後、日産も受託生産に興味を示さなかったとの更新情報が出てきたため、2月17日に追記する。

アップルカー発売に関する報道。

Appleが2024年にアップルカーを発売を計画していると、ロイター通信が2020年12月に報じた。(パンデミックにより遅延する可能性もあるとも報じられた)。Appleはその計画や将来の製品についてコメントすることを拒否したが、関係者への取材では以下のことが判明した。

  • バッテリーコストを根本的に削減し、航続距離を長くすることが可能であることがアップルカーの競争力。
  • アップルカーは消費者向けの自動車(無人タクシー等ではない)。
  • 自動車製造はパートナー企業への委託を検討。
  • LIDAR等のセンサーシステムに関しては外部パートナーの利用を決定。(※一部センサーはApple内部で開発)
  • 自動車事業の経験がないためサプライチェーンも課題。

ロイター通信原文(Apple targets car production by 2024 and eyes ‘next level’ battery technology)

さらに2021年に入り、Appleは生産委託パートナーとして、韓国や日本の自動車メーカーと交渉していることが報じられた。最初に有力視されていたのは現在自動車(ヒュンダイ)である。ヒュンダイ傘下の起亜が米ジョージア州の工場で製造する可能性が高いとの見通しであった。2月に入ってからも韓国紙・東亜日報(電子版)が「起亜とアップルが2月中にも契約する予定で、アップルは前払い金として4兆ウォン(約3700億円)を払う」と報じた。米CNBCテレビも2月3日、ヒュンダイ傘下の起亜が自動運転のEVの生産委託の交渉が合意に近づいていると報じた。
しかし2月6日、ブルームバーグはAppleとヒュンダイの交渉が一時中断したと、以下のように報じた。

  • 一連の報道がアップルの公式発表前にリークされたことについて、アップルが不信感を募らせたこと。
  • ヒュンダイグループ内で意見の対立(ヒュンダイ社内、ヒュンダイ-起亜間)がある。

また2021年2月4日には、日本を含む複数の自動車メーカー(少なくとも6社)に、アップルは生産委託を打診しているとも報じられた。
ロイター通信原文(Apple, Hyundai set to agree electric car tie-up, says Korea IT News

CNBC原文(Apple and Hyundai-Kia pushing toward deal on Apple Car)

ブルームバーグ原文(アップル、現代・起亜とのEV生産巡る協議が最近中断)

日本経済新聞原文(アップル、日本勢にEV生産打診か 水平分業の決断迫る)

アップルカー発売に驚きはない。

巨大資本かつブランド力の高いアップルが自動車業界に参入することのニュース性は確かにある。しかし自動車業界を揺るがす程の驚きはない。アップルは以前よりアップルカー発売に意欲的であったことが知られていた。しかし2019年に自動運転部門の社員を大幅削減したことで、アップルカー発売の可能性は低くなったと市場が判断したため、最近、この話題が出ていなかっただけだ。さらにEVへの参入障壁が低くなることでプレーヤーが増えることは、以前から既定路線であった。またEV市場への参入を容易にする企業は、カナダの大手自動車部品サプライヤーMagna(マグナ)と、アメリカの自動運転ソフトウェアWAYMO(ウェイモ)だと考える。

自動車部品Magna社へ完成車の生産委託

自動車部品サプライヤーのマグナは自動車部品販売だけでなく、「完成車の生産受託」サービスも提供している。マグナは、BMW、ダイムラー、ジャガーランドローバー、トヨタ向けの完成車の生産委託契約を結んでいる。合計で370万台以上の内燃車、ハイブリッド、電気自動車(EV)を受託生産している。もちろん、このサービは新規参入者へも提供している。ソニーがCES2020で発表した電気自動車(コンセプトカー「Vision-S」)もMagnaへの生産委託により実現した。ソニーをみてもわかるように、自動車業界以外のプレイヤーが参入することが容易になったのだ。
Complete Vehicle Manufacturing MADE BY MAGNA

自動運転ソフトウェアWAYMO社とのライセンス契約

自動走行の根幹となる技術は当然AIである。このAI技術の精度を左右する最大の要因はどれだけ学習させたか。つまり、どれだけ多くの自動走行距離があるかである。自動走行において、多くの企業が集積し、実験を進める先端地が米カリフォルニアにある。この米カリフォルニアの公道での各社の自動走行距離が圧倒的に長いのは、米ウェイモ社(次にGM社)である。各社でそれぞれ研究を進めている自動運転ソフトウェアであるが、淘汰され、将来的には数社に収斂すると考える。そして新規参入者はウェイモ社等の強いプレイヤーとライセンス契約することで、自社開発が難しい技術を得ることになると考える。
自動運転距離が世界25位のトヨタ。1位(米国)と780倍、2位(中国)と379倍の差。

Appleとパートナーになる選択も日本勢は考慮すべき

しかし、少なくとも直近では、新規参入者の自動車製造コストは割高になってしまうと考える。スマートフォンの鴻海のようなプレイヤーがまだ育っていないからだ。しかし、それでもAppleなら十分に利益を出す販売が可能だと考える。高価格でアップルかーを販売可能なブランド力と、これまで築いた直販型のアップル製品の販売網があるからだ。自社ウェブサイト経由での直接販売は、BMWも取り組んでいる改革である。テスラと同じく、アップルはこの販売チャネルを有していることが大きい。
ヒュンダイ内も議論があったことと同じく、日本の自動車メーカーも「下請けになる選択肢はない」との声も大きいと考える。日本を代表する産業であるため、そのプライドを大切にすることも理解できる。しかし、Appleとパートナーになる選択も日本勢は考慮すべきである。おそらくAppleの製品セグメントは「高級な電気自動車」のみである。日本勢は自社が戦う主要ドメイン(競争領域)への影響について、しっかり精査して頂きたい。そして、今後も新規参入者が現れることを前提とし、その中で、アップルカーから生産委託を受けることでどの程度、確実に収益をあげることが可能なのか、シナリオを考えて頂きたい。もちろん「EV以外(e-fuel、水素自動車等)の難易度の高い技術は譲らない」などの検討もして頂きたい。
下請けにはならないとアップルカーを無視することは簡単であるが、戦略的に考え、Appleとパートナーになる選択も日本勢は考慮することが大切だと考える。
BMW、新販売戦略を発表。デジタルで最高益に。

Appleは日産との交渉も決裂。【追記】

アップルは日産自動車にアプローチし、過去数カ月間にわたり提携の可能性について話し合っていたが、協議は既に打ち切られていると、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。
日産の広報担当者は「アップルと協議はしていない。日産はCASE時代における自動車産業の変革に向けて、他企業や団体とのパートナーシップやコラボレーションの活用に関して常にオープンだ」と述べた。
(FT記事)Apple approached Nissan to work on autonomous car project

【参考記事】
e-fuel普及シナリオも用意すべき。
新興国でもEVシフト?脱内燃車は先進国だけでない。

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