ROICとは?計算方法は?
ROIC(ローイックまたはロイック)は企業価値算定に必要な重要な経営指標(バリュードライバー)である。ROICは正確には「NOPLAT ÷ 投下資産」で算出する。しかしNOPLATの算出が複雑であるため「(営業利益×(1-実効税率))÷ 投下資産」と近似値がROICとして扱われることが多い。また「投下資産」を「投下資本」と混同して呼称されることがインターネット上では多い。
ROICとは?計算方法は?
ROIC(ローイックまたはロイック)は、「Return on Invested Capital(投下資産利益率)」を指す用語である。企業価値算定に利用する数字である重要なバリュードライバーであるため、多くの企業が経営指標に採用する。ROICの値は以下の式で算出する。
- ROIC=NOPLAT÷投下資産
また投下資産(Invested Capital)は、以下式で算出する。
- 投下資産 = 事業用資産(Operrating Asset) – 事業用負債(Operating Liability)
または - 有利子負債 + 株主資本
前者は理解しづらいため「有利子負債 + 株主資本」が投下資産に使われることが多い。尚、有利子負債とは、社債や長期借入金などをさす。一方、株主資本は、普通株式・優先株式・利益剰余金から構成される。
ROICの定義に注意すべき
インターネット上ではROICを以下のように定義・説明されることが多い。
「ROICとは投下資本利益率の略称である。その計算方法はROIC=(営業利益×(1-実効税率))÷(株主資本+有利子負債)」
この説明は厳密には、日本語名称・計算方法ともに間違っている。しかし直感的に理解しやすいことと、計算結果に致命的な誤差はないことから、この説明が一般的になりつつある。
ROICの名称は、正しくは「投下資本(Total Funds Invested)」でなく「投下資産(Invested Capital)」である。尚、本来であれば「投下資本(Total Funds Invested)」は以下のとおり異なる計算式となる。
- 投下資本 = 投下資産 + 非事業用資産
または - 有利子負債及び負債同等物 + 株主資本及び株主資本同等物
このため「投下資本」と聞いた場合、それが「投下資産」と「投下資本」のどちらの意味で使っているのか、聞き手の判断が必要となる。
次にROICの計算式であるが、分子は「営業利益×(1-実効税率)」でなく「NOPLAT」である。しかし営業利益の方が直感的に理解しやすく、致命的な程の数字の誤差はないため、一般的に使われているのだと考える。
尚、「営業利益×(1-実効税率)」はNOPATを指す。つまりインターネット上で出回っているROICの計算では、NOPATとNOPLATを混同して説明されていることがわかる。
(参考)NOPATとは?
(参考)NOPLATとは?
(参考)EBIT、EBITA、EBITDAとは?違いは?
定義に注意すべきROICの事例
実際、日本の大企業であってもROICの算出式に(投下資産ではなく)投下資本を採用している企業もある。
例えば、積水化学が2020年に発表した中長期戦略「VISION 2030」。
積水化学の発表資料を読む限り、ROICを経営指標としておいているものの、ROICの計算式では分母を「投下資本」と呼んでおり、その算出アプローチも異なることがわかる。
このように、実務においても、投資活動に置いてもROICの定義が企業によって異なることがあることに注意が必要である。
さらに日本最大手の証券会社のホームページでもROICの用語説明を「一般的な計算式はROIC=(営業利益×(1-実効税率))÷(株主資本+有利子負債)」というように、「一般的な」との但し書きをつけて紹介している。
—————————————————————————————–
この記事はドイツビジネスコンサルティングが作成しています。欧州に関する戦略/調査は、弊社にお任せください。
ご相談・お問合わせは、下記よりお願いします。
お問合わせフォーム—————————————————————————————–