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自動車業界で進む、EVバッテリー領域への垂直統合。

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近年、拡大が加速するEV市場の動きを踏まえ、自動車各社はEVバッテリー領域へ向けて垂直統合(川上統合)を進めている。

(参考)垂直統合とは?

バッテリーはEV最大の課題

そもそもEVバッテリーは、EVの付加価値の30-40%を占める最重要部品である。また動力であるバッテリーなしでは自動車(EV)は走れないため、生産台数を増やすためにバッテリー調達は必要不可欠である。

それにも関わらず、自動車メーカーはEVバッテリーの調達に高いリスクを抱えている。1つは世界のEVバッテリーサプライヤーの7割が中国メーカーであるために、中国に頼らざるを得ないこと。さらに、その原料であり15-20年で枯渇されるといわれている希少金属コバルトの権益の大半を、中国資本に抑えられている現状がある。特にEUは世界最大のバッテリー(EVに利用されるリチウムイオンバッテリー)輸入地域であることから、バッテリー調達リスクは非常に高く、欧州委員会レベルでも2017年からその課題に取り組んでいる。

自動車メーカーの動向

それでも成長するEV市場へ需要を満たすだけの台数を投入する必要があるため、自動車メーカーはEVバッテリー調達へ向けて投資(垂直統合)する動きを見せている。具体的には、EVバリューチェーンの川上であるバッテリー生産や、バッテリー原料の調達に向けて、自動車メーカーは他社へ出資・アライアンスを組む動きを進めている(以下例)。

  • BMWはバッテリー原料を自社で調達し、バッテリーメーカに供給する方針:
    電池セルの主要原料であるコバルトとリチウムを自ら調達し、セルのサプライヤーに供給する方針を打ち出している。BMWが2021年から投入する「第5世代」の電動パワートレインに用いるコバルトの20%をマナジェムから購入する。残り80%はオーストラリアで調達する。
    BMWは調達したコバルトとリチウムをバッテリーサプライヤーである中国CATLと韓サムスンSDIに供給する。
  • VWはバッテリーメーカと合弁会社設立:
    ドイツでのバッテリー工場建設に向け、元テスラ社員2人が創業したスウェーデンの新興企業ノースボルトと合弁会社を設立した。
  • VWはバッテリーメーカと合弁会社設立:
    パナソニックと合弁会社を設立し、パナソニックの日本と中国の工場でバッテリーを生産すると発表した。
  • PSAはバッテリーメーカと共同で工場設立:
    仏石油大手トタル傘下の産業用電池メーカーのサフトと共同で、向こう10年かけてフランスとドイツでセル生産に55億ドル投資すると発表した。
  • GMはバッテリーメーカと共同で工場設立:
    韓国の LG化学 と共同で米オハイオ州に23億ドル(約2400億円)かけてバッテリー工場を建設する方針を明らかにした
  • Teslaは中国CATLと新バッテリーを共同開発する方針:
    Teslaは中国CATLと新バッテリーを開発し、2021年に価格競争力のあるモデル3を投入することを目指している。この開発は使用済み電池利用事業も含むテスラの包括的な戦略の一環。

 

自社グループ内にバッテリー調達・生産機能を持つ会社を所有するまで、まだ垂直統合は進んでいない。しかし、確実にバッテリー調達へ向けた「垂直統合」の流れが自動車業界の中で進んでいるように見える。

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